本稿は,地域通貨の歴史的流れをふまえ,市民の新たな信用として地域通貨がどのように機能しうるのかを探っている.そのため最初に,30年代と80年代以降の代表的な地域通貨に関する理論を整理し,さらに貨幣と信用の観点から地域通貨の理論的な提示をする.また,クレジット発行の方法などの違いから地域通貨の分類も行い,地域通貨を多角的に捉える.そして,これらの理論や分類を念頭に置き,海外の事例を参考にして立ち上がった日本各地の取り組みの展開と現状を示し,海外と比較してユニークで,先進的な特徴があることを明確にする.補完通貨的なものと,助け合いシステムに純化していくものの2つの流れが現れつつある.市民信用としての地域通貨は,市場原理とは違う原理で取引の媒介になるものであり,そのため私たちの発想の転換を促し,地域の社会経済システムに新たな展開を生み出す可能性を秘めている.