市民的連帯,中でも異質な集団間の広域にわたる水平的関係に基づいた幅広い協力はどのように生まれるのかについては,議論があまり多くないのが現状である.本研究は社会関係資本論に基づき市民的連帯を促進する諸条件について探ることを目的とする.中でも文化資源を基にした集団間の連携構築の事例に着目し,具体的には四国遍路文化の振興とその世界遺産化登録運動を対象とする.そしてこの運動を通じて生まれつつある新たな人間関係,幅広い集団間の連携,及びその経緯や文化資源の果たす役割について,郵送調査の結果とインタビュー調査の内容から探索的に議論を進めた.その結果,文化資源や規範を人々が共有していることが異なる立場の間の相互理解を促進することが確認された.