本論の目的は,多くのNPOの実務者たちが訴える「資金不足」を財務データベースから明らかにし,さらにその構造を探ることにある.資金不足を組織経営の持続性の問題と捉えた.組織の成長・発展段階によって持続性の意味が異なるが,本論文で扱ったデータが2003年度当時のものであることから,対象となったNPOを「誕生期」にあると位置づけた.誕生期のNPOは主として資金繰りの問題に直面している.そこで,NPO法人財務データベース作成委員会が構築したNPO財務データベースを用いて,主として資金繰りにかかる費目や財務指標を用いて分析を試みた.その結果,収入規模の大小にかかわらず,1ヶ月程度の支出分に当たる現預金,3ヶ月程度の流動資産を保有している団体が多いことがわかってきた.しかし,それは人件費など固定費を極端に抑え,理事や団体関係者からの短期,中長期の借入でかろうじて維持されているものであった.NPOの経営者は持続性を担保するためには一定規模の現預金や流動資を維持する必要があることを経験的に理解し努力している.しかし,その実情は無理を重ねたものであり決して真の持続性とは言えないだろう.