この研究の目的は, ウォーミングアップ (以下W-upと略す) 中の低い強度の運動でも日々の心拍数を頻繁に測定することにより, トレーニング効果の評価を行えるかどうかを検討することであった。供試馬はサラブレッド種3歳5頭 (雄2頭・雌3頭) を用いた。供試馬は運動強度を徐々に増加しながら, 約4ヵ月間, 週6日のトレーニングを実施した。W-upは毎日, 分速約400mの速度で1,250m行うように騎乗者に指示し, そのときの心拍数を測定した。W-up時の心拍数は日々のW-up速度のバラツキによる影響を少なくするために5日間の移動平均値とした。W-up時の心拍数はトレーニング開始後約60日までは減少する傾向を示したが, その後はほぼ横ばいになった。また, トレーニング開始前とトレーニング期間中2週間ごとに行った規定運動負荷試験で算出されたV200値とV175値 (心拍数が200および175拍/分の時の速度) を用いてトレーニング効果の評価を行った。両者ともトレーニング開始後約60日までは増加する傾向を示したが, その後はほぼ横ばいになった。規定運動負荷試験により算出されたV200値と規定運動負荷試験を行った日のW-up時の心拍数は有意な負の相関を示した (r=0.765, P<0.001)。このことから, W-up程度の低い強度の運動でも, 日々の心拍数を測定することにより, トレーニング効果の評価を行えることが示唆された。