本稿では,明治期に近代文学として革新された俳句の成立メカニズムを,ネオ・サイバネティクスすなわち構成主義システム論にもとづいて考察する.具体的には基礎情報学の理論的枠組を用い,俳人,俳句結社,俳句マスメディアなどを「階層的自律コミュニケーション・システム(HACS)」と位置づけて分析をおこなう.この結果,19世紀末に封建的日本社会が機能的分化社会へと移行するなかで,各種のシステムが共進化をつうじて誕生する過程として俳句革新を捉えなおすことが可能になる.分析の際,システム同士の関係性についてもくわしくとりあげる.