本稿は,情報学の哲学的前提に接近することで,情報学の今後の方向性を探ろうとするものである.まず,情報検索研究におけるアプローチ転換を例に,情報学の哲学的前提に関わる問題の析出を試みる.次いで,そうした問題に接近する一種のメタ理論としての情報学をいくつか概観し,情報学の哲学的前提に関する議論と生命観の問題とが一体化していることを指摘する.一方で,生物学ないし生命論の深層にも同様の哲学的前提の問題が潜在しており,情報観の問題をその中心に見いだすことができる.したがって,情報学と生命論は,その深層における相互参照の構図の中で表裏一体となっているのであり,擬人化の問題のような共通の課題に共に取り組む必要がある.