本研究は,日本文学と日本語学分野の学会発表を追跡調査し,それにより当該分野の研究における学会発表の現状を明らかにすることを目的としている.調査対象は,日本文学と日本語学の主要 6 学会で 2000 年 ~ 2009 年の 10 年間に行われた学会発表 1,421 件である.調査項目は,学会発表の後に同内容の論文が出版された割合,論文が出版された場合の掲載メディア,論文が出版された場合のタイムラグの 3 点である.結果は,学会発表を行った後に同じ学会の学会誌に論文を掲載していたのは 23% であった.また,4% は学会発表を行った学会以外の学会誌など注目度の高いメディアに掲載されていた.学会発表後に同内容の論文の出版が確認出来たのは全体の 38% であった.これらの結果から,学会発表の内容を論文として出版することの難しさが明らかになった.