高等学校の普通教科「情報」において,インターネットの匿名性に焦点をあてることで情報モラルを育成する授業を設計した.本研究では生徒自身のなりすまし体験と内省(生徒の自己の振り返り)を重要な要素とし,クラス単位でこの体験を重視した指導法と教師による事例紹介を中心とした指導法のいずれかを実践して,生徒が記述した内省文から匿名性についての気づきや理解の違いを検討した.その結果,体験を重視した指導法では匿名性による相手識別の困難さを多くの生徒が指摘することができた.また,匿名性について受信者のみならず送信者の立場で考えることができることが示唆された.一方で,インターネット上でのルールの必要性に気づきにくい特徴があり,法制度を含めた情報社会のあり方については別の機会に補う必要があることが示唆された.