本稿は,システム論,具体的には基礎情報学を理論的枠組とする俳句研究である.俳句の創作と解釈は,結社や協会などの共同体やマスメディアと結びついておこなわれてきた.これに加えて近年,俳句をめぐってインターネットも盛んに利用されている.基礎情報学において,心,共同体,マスメディア,インターネットは,階層関係にある「オートポイエティック・システム」(正確には「階層的自律コミュニケーション・システム」.「HACS」と略記)として捉えられる.HACS同士の相互関係から生まれる「情報」にもとづいて,意味形成(本稿においては,俳句の創作と解釈に対応する)がおこると考えるのである.基礎情報学の観点からは,共同体,マスメディア,インターネットが俳句の創作と解釈に及ぼす影響について,「情報」と「HACS」という二つの概念にもとづいて一貫して明らかにすることができる.