本研究において実施した二重底強度に関する実船試験ならびにその理論解析から得られた結果を総括すると, 大要次の通りである。 (1) 一般に, 二重底構造の強度および剛性に関する力学的挙動は, 二重底を異方性板と見なし, ホッパ, 船側構造, ショルダタンクおよび横置隔壁構造の剛性を考慮した解析法により推定することができる。 すなわち, 二重底の撓みおよび構造部材に生ずる応力は, まず, 単独倉として行なつた解析の結果に, 横置隔壁および隣接倉の拘束影響による修正を行ない, さらに船体縦曲げの影響を加えれば, 設計上十分な精度で算定することができる。 ただし, 船底および内底板縦通材は, 縦桁と一体には働らかず, とくに隔壁端部においては, 縦通材の曲率は縦桁のそれに比べてはるかに大きい。 以上の事柄は, 二重底構造をはじめ, その周囲の船側, 隔壁などの諸構造部材について広範囲にわたつて実施した歪計測の結果から裏付けされた。 (2) 二重底構造の横置隔壁位置における境界条件については, 貨物倉に油あるいは鉱石などを積載して, 隔壁に側圧力が作用すると見なされる場合には, 単純支持よりむしろ固定に近い場合を想定して強度解析を行なうことが必要である。 (3) 二重底の剪断撓み量は, 通常, その曲げ撓み量とほぼ同程度と考えられる。したがつて, 剪断撓みを無視した計算は, 過小の撓みを与える危険がある。今回の二重底撓み計測の結果からも, このことが確認された。 (4) 二重底の各構造部材に生ずる曲げ応力 (船体縦曲げの影響を除いた) は, 軽荷喫水で当該倉を満載するという極めて苛酷な荷重条件でも, 10kg/mm2を越えることはほとんどなかつた。ただし, 肋板の船側ホッパとの隅角部には, 局部的な著しい応力集中が認められた。 一方, 二重底, 船側, 隔壁の諸構造部材に生ずる剪断応力は, 一般に高い値が計測され, なかでも, 中心線桁板および側桁板の横置隔壁端部においては, 10kg/mm2を超える応力も計測されたことは注目すべきであろう。 (5) 縦通材の剪断有効率の値は, 通常極めて小さいことが推定された。