軟鋼板に楕円表面切欠のような板厚方向に非貫通な切欠の存在する広幅試験片をもちいて, 板厚方向の切欠の大きさが脆性破壊発生特性におよぼす影響を調査し, 板厚方向破壊の発生現象を明らかにすることができた。 また, 溶接継手における非貫通切欠の破壊発生条件を板幅方向破壊と板厚方向破壊の両条件について個々に明らかにすることができた。 試験結果を総括すると以下のように結論づけられる。 (1) 母材における楕円表面切欠の公称破壊応力は, 相対切欠深さ, t 1/ t , が増加するとともに減少し, t 1/ t =1.0の貫通切欠でその値は最小となる。 (2) 母材における楕円表面切欠の脆性破壊発生様式は t 1/ t の値に関係なくすべて板厚方向破壊を示す。 (3) Irwinの楕円表面切欠に関する理論は, 切欠深さが比較的大きい場合にも適用可能である。 (4) 母材の脆性破壊発生において, 板厚方向破壊および板幅方向破壊の両者の K IC値はほぼ同一値となる。 (5) 溶接継手における長方型非貫通切欠の公称破壊応力- t 1/ t 曲線は, 板幅方向破壊と板厚方向破壊の場合とで相異なる傾向を示す。破壊応力は板幅方向破壊 ( t 1/ t <0.6) ではほぼ一定となり, また, 板厚方向破壊 ( t 1/ t >0.6) においてはIrwin理論を満足する値となる。