造波抵抗理論が船型計画に役立つためには, 造波のメカニズムがあきらかにされねばならない。その手段として, 波形解析があることは周知の通りであるが, この場合, 粘性影響が介入しない船首波を単独に抽出することが必要である。前回の報告では, 実測船首波系のradial cut profileと, 船首自由波に対する漸近展開式を対応させ, これより船首波の“実測”振幅関数を求めるプロセスについて述べ, かつWigley船型に対する適用例を示した。 前回は, その予備的な性格から, 模型船もありあわせを使用したため, その長さ (2.5m) も東大水槽の幅 (3.5m) に対してはやや過大であり, 船型と特異点の対応もMichell近似をそのまま使用し, また波紋の理論計算においても, 局部波を省略したり, 自由波をSin波のみで代用 (ただし+0.06Lの位相前進量を見込む) するなど, いくつかの粗い取扱いをおこなつている。 次のステップとして, このような欠点を改良しながら般首波に重点をおいた波形解析を, 基礎的な問題にまで立戻つて系統的に実施することは, 当然必要なことと考えられる。現在このような見地に立つた研究が, 東大をはじめ, 九大・船研などで共同的・平行的に進められているが, 以下はそのうち東大水槽で, 過去1年間に分担実施されたシリーズに関する第1報である。