80kg/mm2級高張力鋼 (25mm材) の大入熱溶接継手について表面切欠試験等を行い, 切欠長さ, 切欠深さ, 角変形量等の影響を明らかにした。更に実験結果に, 線型破壊理論を適用し, つぎの結論をえた。 (1) 実験結果により多少の修正をした KIC の式 (5) により, 表面切欠試験における降伏点以下の破壊例すべてを統一的に整理できた。 (2) この式によれば, KIC 値の対数と絶対温度の逆数との間には, 切欠長さ, 切欠深さ, 角変形量にかかわらず, 単一の直線関係があるので, 僅かな実験結果から, 実際構造物の破壊挙動を知りうる。 (3) 溶接止端部は, 極く僅かな深さの切欠が連続して存在する表面切欠, と考えられ (6) 式によつて K 値を計算することにより, 特に欠陥のない溶接部からの破壊も解明できる。 (4) 試験溶接線の近傍に, 溶接線と平行な切欠が存在するとき, この溶接の溶接線方向の残留応力は, 切欠からの破壊性能に, ほとんど影響を与えないが, 溶接線と直角方向の残留応力は, 大きな影響を与える。また, この溶接線と直角に溶接ビードを置き, 大きな残留応力を付加すると, 破壊応力遷移曲線は, 約60deg.C高温側に移行する。