本論文では, 面内力を受ける平板 (円孔, 楕円孔あるいはクラックを有する) の弾塑性解析を行なった.弾塑性解析の基礎概念として初期歪法を用いたため, 固有歪がその近傍に及ぼす影響係数を求める必要が生じた.そこで, 複素応力関数を用いて, 台形領域に存在する一様な固有歪の影響係数を求めた.解析中, 首尾一貫して複素応力関数を採用したため, 鏡像の原理および写像を導入することができ, 円孔, 楕円孔あるいはクラヅク上の自由境界条件を常に満足している解析関数を見出すことができた ((48) 式~ (56) 式). 開口近傍の応力の値は有限要素法の計算結果と比較して, かなり良い精度で得られることがわかった (Fig.18). なお, 本方法の計算時間は, 円孔板 (無限板) の場合, 要素数86に対して, 固有歪の影響係数を作るのに約300秒, その後1ステップの平均所要時間は約1秒で計370秒 (70ステップ) を要した.一方, 有限要素法では, 約300自由度に対して, 75ステップの計算時間は約300秒で, 1ステップの平均所要時間は約4秒である.