4.1 高粘度油吸引技術 波浪中において低粘度~高粘度まで対応可能な吸引装置として全口径型ジェットポンプを選定し、シミュレーションによりポンプ内部の高粘度油の流動状況を把握し、高粘度油吸引模型実験により高粘度油吸引特性を把握した。シミュレーションにより、マルチノズルは単ノズルより流送部でのジェット水圧力回復が早いのでポンプのコンパクト化に有利であることが明らかとなった。また、管壁近傍における速度勾配が大きいことから、高粘度油の付着防止効果が大きく高粘度油吸引に適すると判断された。高粘度油吸引模型実験では、0.1m2/s(10万cSt)以上の高粘度油でも水とほぼ同等の吸引性能が得られ、0.8m2/s(80万cSt)の高粘度油でも吸引が可能であった。また、波浪中で吸引口が空気面に露出後のポンプの吸引性能はすぐに回復し、高粘度油中の異物(ウエス、ロープ、紙コツプ等)を問題なく吸引可能であることが確認された。さらに高粘度油吸引後の高粘度油粘度が低下することがわかった。以上より全口径型ジェツトポンプが高粘度油吸引用ポンプとして使用可能であると判断した。 4.2 油水粗分離技術 回収油水中の水を分離して貯油効率を上げる必要があるため、高粘度油を効率よく回収可能と想定した重力式油水粗分離装置の研究開発を行った。構造様式は高粘度油を装置の前方から排出することを特徴とする高粘度油前方排出方式の油水粗分離装置について、実際のジェツトポンプにより吸引、回収された高粘度油を用いた油水粗分離実験を実施し、連続運転による、油水粗分離性能を把握した。粗分離水率は、実験範囲内では滞留時間の影響は小さく、95%以上が得られ、油水比率が変化しても油水粗分離性能が安定していること、また長時間運転においても油水粗分離性能が安定していることが確認できた。以上より全口径型ジェツトポンプで吸引された高粘度油水の粗分離装置として、本装置が適用可能であると判断した。予備実験で得られた基礎データと模型実験でのデータをもとに、高粘度油対応の油水粗分離装置の基本設計を実施することが可能となった。