座屈崩壊後, 引き続き大きな繰り返し変位を受ける鋼構造部材の亀裂強度に関して, 定量的評価を試みた。すなわち, JIS SM 490 Cを供試して, 帯板試験片を用いた繰り返し曲げ荷重下での亀裂発生試験, および有限要素法による弾塑性大変形解析を実施し, 以下の知見を得た。 (1) 帯板試験片を用いた, 繰り返し曲げ荷重下での亀裂発生試験結果から, 座屈崩壊後, 引き続き種々の繰り返し変位を受けると, 亀裂は圧縮側表面では試験片幅方向中央部から, 引張側表面では試験片側面との角部から発生し, 圧縮側の亀裂は引張側に比べて早期に発生・進展することが明らかになった。また, 繰り返し回数が進むにつれて, 圧縮側表面から発生した亀裂が大きく成長して, 試験片を破断に至らしめることが明らかになった。 (2) 軸力圧縮予歪材の引張試験結果を基に, 等方硬化と移動硬化両方の影響を考慮できる複合硬化則を用いて, 繰り返し大塑性歪範囲での応力~歪関係を表現できることが明らかになった. (3) 有限要素法による解析結果から得られた亀裂発生部の1サイクル目の歪範囲と, 亀裂発生試験結果から得られた微小亀裂発生繰り返し回数および破断繰り返し回数との間に, 片対数目盛で線形な関係が確認できた。また, 圧縮側および引張側表面での亀裂発生部の1サイクル目の歪範囲と, 微小亀裂発生繰り返し回数との関係はほぼ同程度であった。 (4) 座屈崩壊後, 引き続き種々の大きな繰り返し曲げ変形を受ける鋼構造部材の微小亀裂発生強度および破断強度を推定出来る式を導出した。 このように, 座屈崩壊後, 引き続き種々の繰り返し変位を受ける鋼構造部材の, 亀裂発生強度ならびに破断強度を定量的に把握・評価出来る目処を得た.今後, 材質・板厚 (部材寸法) ・繰り返し変動荷重などが亀裂発生強度ならびに破断強度に及ぼす影響についての検討を行なう所存である。