ナホトカ級の油流出事故を想定した高粘度、高波浪対応の油回収装置の開発に着手し、平成9年度の技術調査を踏まえて平成10年度から2年間に亘る要素研究開発を実施した。それら要素技術開発の結果に基づき、全口径型ジェットポンプを中心に油回収装置の小型、軽量化及び高効率化を図り、プロトタイプの実機1/2相当の大型模型を用いて海上災害防止センター横須賀研修所における高粘度油を用いた大掛かりな波浪中高粘度油吸引実験を実施することができた。その結果、本回収機は実海域において所期の性能を発揮できることが確認され、荒天下の高粘度油回収作業において有効な機材であることが実証された。さらに、総合的な船上処理装置の設計が可能となったことで、高波浪下 (最大波高6m) で高粘度油 (10万cSt以上) を多量 (300m3/h) に回収することが可能な高性能油回収装置の実用化の段階に至った。 本研究の成果は研究で終わるものではなく、出来るだけ早く実機を供給し、油流出による海洋汚染の防除体制の一端を担うことによって、真の貢献が評価されるものと確信している。