(1) 本試験は信濃胡桃が兵庫縣西播地方の氣に適應し開花結實するに至るや否やを檢する意味を以て長野縣小縣郡和村から移入した1年生苗及種子を使用して昭和10年春季に開始したものである。 (2) 信濃胡桃は篠類や雜草の茂生する山地の植栽には不適當であつて,施肥除草等を容易に實行し得る屋敷廻り,畑地又は其の周圍の如き立地に植栽して肥培するのでなければ完全なる生長を途ぐることは出來ない。 (3) 兵庫縣宍粟郡山崎町試驗苗圃の一隅に植栽したものは病蟲害の被害を蒙り過半數は枯死したが生育木中の4本は植栽後5年にして開花結實するに至つたが,風水害並病蟲害の爲め落果數も相當多く,收穫果數は昭和15年3偶,昭和16年19個に過ぎなかつたが樹齡を重ぬるに從つて收癈量は増大するものと考へられる。 (4) 雄花が晩霜の害を蒙ると假に雌花は多數開花しても結實するに至らないものである,而して信濃胡桃は雌雄同様であるが單性花であつて雄花は長さ2~3寸の穗状花序をなし嫩枝の基部に着生し,雌花は裸花で嫩枝の頂端近くに着生し花梗上に1個乃至2個着生する。