(1) わが国の落葉樹林土壤の化学的性質と腐植形態に関する知見を得ることと,併せて同じ立地条件下において樹種の相異がこれ等の性質に,どのような影響を及ぼすかを明らかにするために,小根山国有林のケヤキ林及びクリ,コナラ林について検討を行つた。 (2) 化学的性質については次の結果を得た。落葉の分解はクリ,コナラ林はケヤキ林より良好であつた。同じ土層ではケヤキ林はクリ,コナラ林よりもpHが高く,加水及び置換酸度は小さかつた。置換性石灰含有量及び同石灰飽和度はA1層ではケヤキ林はクリ,コナラ林より著しく大きかつた。 (3) 腐植形態は全般的には両林地の相異は明らかではなかつた。F層では腐植化の進行は小さく且酸化に対して不安定な形態を示していた。A層ではCa及びMgと強固に結合した腐植が認められ,又腐植化の進行と相対的な酸化に対する安定性の増加が見られた。この点はA2層はA1層より著しい。 稿を終るに当つて終始御鞭撻を賜つた場長大政正隆博己士,土壌調査部長(前)林行五技官並びに(現)宮崎榊博土に深く感謝する。又本実験遂行に際して御援助を賜つた前橋営林署の各位に御礼申し上げる次第である。