前報において1% NaOHにより室温で48時間浸出して抽出される木材中のアセチル基の含量の差が木材乾溜における溜出酷酸量の樹種によるちがいをもたらす有力な原因であろうと推測した。 そこで本報では更に任意に5種の樹種(シイ,ミズキ,コナラ,ハゼノキ,アカマツ)をえらんで,この推定が成立するか否か調べた。その結果前報と全く同様に, 1% NaOH抽出残渣を乾溜すると,樹種によらず乾溜経過も乾溜成績も略々等しいことが認められ(第1, 第3表参照),しかも1% NaOHの抽出液中に見出される酷酸量が,原木粉と残渣の乾溜溜出酷酸量の差に略等しいこと(第1表参照)が見出され,推定は確立された。なお原木粉乾溜のさい, 240~260°Cの溜分が20°C毎の溜出液量及び酸濃度の最高値を与えるが,これが残渣の場合に消えることも以上の仮説により説明される(第2, 第3表参照)。また残渣について,セルローズ・リグニン・ぺントーザン・アセチル基の含量を測定した(第4表参照)。ベントーザン含量は針・広葉樹の間で著しく異るにかかわらず,木材乾溜では略等しい溜出酷酸量を与えることはベントーザンそのものが溜出酷酸の有力な起源であるとは考えられない。