これまで,アカマツとクロマツの正確な分類は,両者の中間的な形態的特性を有する個体が高頻度に出現することから,非常に困難とされてきた。本研究では,DNA分析技術の一種である制限酵素断片長多型分析法を用いて,葉緑体DNA上に存在している rbc L遺伝子の両樹種間での比較を行った。その結果,使用した11種類の4塩基認識制限酵素のうちの4酵素( Alu I, Cfr 13I, Hae III, Scr FI)において各1カ所(計4カ所)で認識部位に違いのあることが明らかとなった。この両樹種間に存在する認識部位の多型は,アカマツとクロマツを分類するための指標の一つとして利用することができる。また,この遺伝子の中央部分(385bps)の塩基配列をサンガー法を用いて決定したところ,このDNA領域で,6カ所の塩基置換が起こっていることが判明し,両種は系統進化上きわめて近縁であるとする従来の説を再考する必要性が示唆された。