ササが優占する林床をブルドーザによってかき起こす地表処理は,天然更新補助作業として広く行われている。北海道北部の針広混交林内のかき起こし地で,野ネズミ類による種子の捕食について,かき起こし後2年間にわたって実験を行った。ササ林床内におけるアカエゾマツ種子は,かき起こし地やその境界部よりも有意に早く捕食された。また,ササ地から10mまでは距離が長くなるほど種子の捕食は減少し,種子の生存期間が長くなった。調査区でヒメネズミ,エゾアカネズミ,エゾヤチネズミ,ミカドネズミの4種の野ネズミ類が捕獲された。これらの野ネズミ類の捕獲率はササ林床内で有意に高く,かき起こした裸地上では極端に低かった。野ネズミ類の捕獲率と種子の生存日数とは有意な負の相関が見られた。これらのことから,かき起こし地では野ネズミの活動頻度が低く,その結果,種子の生存率が高いと考えられる。動物による種子の捕食はかき起こし地で低く抑えられており,かき起こし作業がこの点からも更新作業として有効な方法であることが示唆された。