東京大学北海道演習林において, 択伐施業の影響を受けたトドマツ個体群動態を, 林分蓄積, 胸高直径 (DBH) サイズ分布, 個体群統計的過程 (デモグラフィー) により記載した。本研究対象地では通常, 8~10年の回帰年で林分蓄積の16%程度の択伐施業が行われている。過去30年にわたる固定調査区データから, 択伐施業がトドマツ個体群動態に与える影響として, 1) 林分蓄積は平衡または増加傾向を示し, 2) 胸高直径分布はL字型から, 小径木を欠く型へと変化する傾向があり, 3) 年平均死亡率から推定された林分の回転時間は自然林と比較して短い,ことが示唆された。伐採とそれにともなう人為的撹乱は, 林分動態に影響を与えており, 天然林の持続的経営のためには,森林の更新動態を意識した管理計画が求められる。