近代科学技術は,使用される概念や用語が整理・統一され,数学を用いた体系化が進んで普遍性を持つようになると,地理上の発見によりヨーロッパの経済活動が地球規模で拡大するのに伴って,言語,宗教,文化を異にする非ヨーロッパ諸国に伝播していく。非ヨーロッパの国々には,中国,インド,エジプト,トルコなど歴史上ヨーロッパよりはるかに長く高度な文明を持ったところがある一方で,第二次世界大戦以後に独立した新興の国も多い。長い歴史の中で育んできたヨーロッパとは異なる文化・文明,宗教,社会制度,さらには国民国家として独立した時期,経済発展の段階,地勢的な位置などこれら非ヨーロッパの後発の国々が置かれた時代背景と個有の条件が,近代科学技術を受け入れ,社会の中に定着させていくに当たって,大きな桎梏となっている。本稿では,非ヨーロッパの国々が,近代科学技術を受け入れ国内で制度化していく過程についてまとめた。