近年,大学図書館は,学術雑誌の恒常的な価格上昇と電子化に対応するために,コンソーシアムによる電子ジャーナル契約を進めてきた。ビッグディールと呼ばれる包括的な契約によって,大学における学術雑誌へのアクセス環境は劇的に向上したが,同時にいくつかの問題も浮かび上がってきている。本稿では,学術雑誌の価格上昇の実態とそれによって引き起こされたシリアルズ・クライシスについて俯瞰する。続いて,国立大学図書館協会の電子ジャーナル契約コンソーシアムの活動の成果とその限界について論じる。最後に,商業出版社に過度に依存した現在の学術情報流通システムの抜本的な見直しに向けた取り組みについて触れる。