研究成果などの知的財産管理の手段として,電子署名とタイムスタンプ技術を基礎とした長期署名の応用が注目されている.本研究では,研究の過程で頻繁に利用される,オフィス系アプリケーションに対応した長期署名の付与方法を提案する.対象とするフォーマットは,マイクロソフト社のOffice 2007に採用されている,Open Office XML(OOXML)とした.長期署名フォーマットには,XMLで記述されるXAdESを採用した.OOXMLへのXAdESの実装として,標準長期署名と拡張長期署名と呼ぶ二種類の方法を提案した.前者はOOXMLで規定するXML署名のファイルに長期署名に関する記述を含める形式であり,後者は独立したファイルに記述する形式である.双方とも,OOXMLとXAdESの仕様を逸脱するものではない.この二種類の長期署名を,Office 2007が生成するOOXMLファイルに付与するアプリケーションを開発した.長期署名付きファイルをOffice 2007で開いた結果,拡張長期署名はXML署名としての検証には成功するのに対し,標準長期署名は失敗することが確認された.XML長期署名としては,標準長期署名の方がより一般的な実装方法であり,OOXMLにおいて長期署名を付与する書式を明らかにするとともに,Office 2007によるOOXMLの解釈にも対処が必要であることが示唆された.