日本の小説家である星新一は,日本のショートショートの第一人者であり,執筆期間の前半(1968~1973)だけで718編の作品を残している.星作品はしばしば物語の骨組みの共通性が指摘されるが,本論文は,そのような物語のパターン性がどのような点から確認できるのかを,11 の物語構造ユニットを用いて表現,分析することにより説明するものである.これらのユニットは先行研究をもとに,星作品に頻出する物語の出来事の要素として設定した.ユニットとその組み合わせを記号で表現したデータを用いて,パターンの分布,因子分析,N-gram による分析を施すことで,星作品の最も基本的な物語構造を抽出した.