蛋白変性剤,特に尿素が製パンに如何なる影響を与えるかを検討せんとして,まず基本的問題として,生地の物理的性質および生地醗酵力に対する影響を観察した。 その結果を要約すれば次のごとくである。 (1) 尿素は,小麦粉の吸水をまし,生地形成時間を短縮し,耐混捏性を若干低下させる。一方塩酸グアニジンは,尿素の1/5濃度では以上のごとき挙動を示さない。 (2) 生地を混捏後放置すると,尿素や塩酸グアニジンを添加した生地は,次第に抗張力をまし伸長度は低下する。生地のあしが弱く,こしが強くなる。この影響は極めて微量の酸化剤の影響に似ている。 (3) (1)のfarinographで示される影響と(2)のextensographで示される影響とは矛盾するかのごとき観を与えるが,蛋白変性剤が,還元剤,酸化剤とは異なつた挙動を示すことについて若干の考察を試みた。 (4) 尿素は,小麦粉の粘度に対しては,ほとんど影響を与えない。 (5) 尿素,塩酸グアニジンは,窒素源となつてイーストの生地醗酵を促進する。