奈良漬は夏期には,白かび,酸変などの変質を起す。特に水さらし塩抜き瓜を漬込んだものは,粕床の糖分,酸分,アルコール分などが瓜の水分でうすめられるため変質し易くなる。これらの変質防止のため,各種食品保存料を粕床に添加してその効果を試験した。 (1) 粕床の白かびはメチルナフトキノンで0.01%,デハイドロ酢酸ソーダおよびソルビン酸で0.02%で防止出来た。安息香酸剤では0.02%では防止出来なかつた。 (2) 漬瓜の白かびはメチルナフトキノンで0.01%,デハイドロ酢酸ソーダで0.02%で,約10日間防止出来た。 (3) 漬上りの風味はデハイドロ酢酸ソーダ,メチルナフトキノンが良かつたが,メチルナフトキノンは容器を開放すると,粕床の表面が変色するため,デハイドロ酢酸ソーダが白かび防止に適すると思われた。 (4) 酸変した粕床の分析では熟成前期は揮発酸が,後期には不揮発酸が増加した。練り粕に各種食品保存料を0.01%の濃度に添加したが各試薬とも酸変防止効果はなかつた。