対人問題インベントリーは,個人が対人関係で抱える問題を8つの方向から直接的に測定する尺度である.研究1ではその日本語版を作成し,単純尺度得点の信頼性係数と尺度間相関,個人内相対得点の信頼性係数と円環モデルへのあてはまりを検討した.その結果1つの下位尺度を除いて原版とほぼ同等の信頼性が得られ,円環モデルのあてはまりでも,少なくとも順序的には円環上に配置できることが確認された.研究2では個別面接を行い,IIPの得点が対人的な問題をどのように記述するのかを検討した.その結果,断片的にしか自覚されず,従って面接でも語られにくい問題点や相手に与える対人的な印象が,この尺度で捉えられることがわかった.特に個人内相対得点による円環グラフは,対人的な特徴がイメージとして描写され,個人理解の際に多面的な切り口をもたらすことが示唆された.今後の研究方向としては,各下位尺度の改良と,実際の臨床事例に適用しその意義を実践的な面から検討していくことが考えられる.