本研究では,大学生が妄想様観念を体験したときの対処方略が,妄想様観念による苦痛に及ぼす影響を,縦断調査と共分散構造分析を用いて検討した.まず,大学生が妄想様観念を高い頻度で体験していることを確認した.次に,(1) 逃避型対処方略が,妄想様観念に伴う苦痛を強める,(2) 計画型対処方略が,妄想様観念に伴う苦痛を弱めるという2つの仮説を立て,縦断調査と共分散構造分析を用いて,双方向因果モデルを検証した.大学生318名を対象に,ピーターズ妄想質問紙とストレスコーピング質問紙を,1ヶ月間隔をおいて2回実施した.調査対象者のうち,95.3%が妄想様観念を体験していた.妄想様観念を体験していた大学生186名のデータを用いて,共分散構造分析を行った.共分散構造分析では,道具的変数モデルを用いて双方向の因果パスを設定した上で分析した.その結果,(1) 逃避型の対処方略を取ると,妄想様観念に伴う苦痛が強まることが分かった.しかし,(2) 計画型対処方略が,妄想様観念に伴う苦痛を弱めることは支持されなかった.