本稿は,パーソナリティの形成・発達研究において変数間の因果関係を推定したい場合に,縦断調査を利用する方法について概説したものである。まず,因果関係を推定するための研究方法として,実験,横断調査,縦断調査の3つを取り上げ,それぞれの特徴と限界について述べた。次に,縦断調査の一形態であり,変数間の因果関係を双方向的に検討できるパネル調査に焦点をあて,交差遅れ効果モデルによって因果関係の分析を行う方法を説明した。そして,変数間の因果関係について推定するためにパネル調査を行った実例として,インターネット使用と攻撃性の関係を検討した筆者らの研究について紹介した。なお,この研究では,インターネット使用から攻撃性への因果関係と,攻撃性からインターネット使用への因果関係が,双方向的に検討された。そして,最後に,より精度の高い因果関係の推定を行うために注意すべき点についてまとめた。