我が国における臨床的議論の中では,自己愛人格と対人恐怖の背景に共通した心理的プロセスがあることが示唆されている。こうした議論を元に,本研究では他者と親和する上での動機づけのあり方に焦点をあて,自己愛傾向及び対人恐怖傾向との関連を検討した。大学生299名に質問紙調査を行い,自己愛傾向,対人恐怖傾向とともに,4側面の親和動機が測定された。その結果,楽しさなどのポジティブな刺激と外的な評価を求めて他者と接する傾向が自己愛傾向に影響することが示された。一方で,ポジティブな刺激は求めずとも,他者からの是認や外的な評価を求める傾向が対人恐怖傾向に関与していることが示された。これらの結果から,自己愛人格と対人恐怖の背景にある心理的プロセスの共通点や相違点が議論された。