本研究の目的は,土居の「甘え」理論の観点から自己愛を捉え,自己愛的甘えの概念を整理し,自己愛的甘えを測定する尺度を作成することであった。自己愛的甘えは,「屈折的甘え」「配慮の要求」「許容への過度の期待」の3つの下位概念が設定された。32項目からなる自己愛的甘え尺度を大学生及び専門学校生515名に施行し,因子分析を行った結果,上記の3つの下位概念に相当する3因子が得られた。さらに確認的因子分析でも十分な適合度を示し,α係数においても高い信頼性が確認された。また,自己愛的甘え尺度は,Narcissistic Personality Inventory-S (NPI-S) で測定している自己愛とは弱い関連性を持ちながらも,「自己主張性」を含まない,別の構成概念を捉えているということ,そして多次元自我同一性尺度 (Multidimensional Ego Identity Scale: MEIS) とは各下位尺度間のいずれにおいても負の相関を示し,対人恐怖的心性尺度,被害観念尺度,疎外観念尺度とはいずれにおいても正の相関を示したことからも,構成概念的妥当性が確認された。