本研究では行動–状態志向性という自己制御能力の個人差を反映する,行動統制尺度90 (ACS-90) の内的一貫性と妥当性の検討を行った。研究1では,ACS-90の内的一貫性が追認され,また確認的因子分析において先行研究と同様の因子構造が示された。研究2ではACS-90の因子的妥当性と構成概念妥当性を行動–状態志向性と神経症傾向との関係,および主観的幸福感への予測から検討した。その結果,行動–状態志向性と神経症傾向は異なった心的傾向であることが確認されるとともに,両者の交互作用は主観的幸福感の低下を予測していた。以上の知見により,ACS-90日本語版の内的一貫性・妥当性が確認されるとともに,神経症傾向と主観的幸福感の負の関係は行動–状態志向性という自己制御能力により調整されることが明らかとなった。以上の結果をふまえ行動–状態志向性の特徴について,自己制御理論の観点から考察した。