男子大学生348名を対象に,進路選択時の親子間コミュニケーションの特徴をとらえる尺度を作成し,アイデンティティとの関連を検討した。青年の特徴として“議論の回避”“議論による立場の明確化”“結合性”“自律した意思決定”の因子が抽出された。議論の回避を高く示す青年はアイデンティティ達成得点が低く,職業決定におけるモラトリアムの得点が高かった。逆に議論による立場の明確化を高く示す青年は模索の得点が高かった。親の特徴として“独自性”“結合性”“議論の抑制”の因子を抽出し,親のコミュニケーションタイプを分類した。独自性と結合性が両方高い“相互交渉”や結合性だけが高い“応援”は,両方低い“不明確”より青年のアイデンティティ達成得点が高かった。親子間で議論を避けないこと,親が青年に受容的,支持的であることが,男子青年のアイデンティティの感覚の高さと職業決定への積極的取り組みと関連することが示唆された。