本研究では,小学校4年生の国語科授業を対象として,教室授業場面における児童間の相互交渉に焦点をあてた継続的な授業観察を行った。その中から,2つの授業に注目し,授業の学習外文脈における児童間対立の形成過程を検討した。その結果,授業の学習外文脈における児童間対立は,初めは些細な児童間の意見対立やトラブルであったが,クラスメートがどちらか一方の立場に同調していく過程で現出し,児童が泣き出してしまう程のからかいや攻撃行動へと発展していったことが明らかとなった。また,攻撃の対象となる児童は,時に児童間の関係性において流動的である可能性も示唆された。さらに,授業の教授–学習文脈に即していると思われる児童の行動であっても,授業の学習外文脈においては,児童間対立が促されることも示唆された。最後に,教室授業場面における観察研究の有効性と今後の研究の方向性が論じられた。