Trapnell & Campbell (1999) によれば,私的自己意識は反芻と省察に分けられ,前者は抑うつと関連する非適応的な自己意識,後者は精神衛生に貢献する適応的な自己意識とされている。本研究では,これらの2つの私的自己意識と抑うつ,およびストレスの因果関係を探るため,大学生を対象に,素因ストレスモデルに基づいて縦断調査を行なった。階層的重回帰分析の結果,反芻の主効果および反芻とストレスの交互作用が2週間後の抑うつを有意に予測した。このことから,反芻は抑うつの脆弱性要因であると考えられる。一方の省察は,私的自己意識の一種でありながら抑うつとの関連が見られなかった。この結果は省察が適応的な自己注目であることを積極的に支持するものではないが,省察のようなある種の自己注目により,否定的な感情を強めることなく自己制御が可能であることを示していると考えられる。