本研究では,様々な対人関係において認知される自己の多様性と精神的健康の関連について検討が行われた。99名の学生を対象に,親密な5人の他者とそれぞれ一緒にいる場合の自己認知について評定を求めた。自己認知は3次元(社会的望ましさ,個人的親しみやすさ,活動性)に基づいて測定した。その結果,社会的望ましさにおける自己の多様性は精神的健康の低さと関連し,個人的親しみやすさにおける自己の多様性は精神的健康の高さと関連した。活動性における多様性は精神的健康と関連せず,全般的な活動性の高さが精神的健康の高さと関連した。このことから,一定した社会的望ましさと多様な個人的親しみやすさが適応的であることが示唆された。自己の多様性と精神的健康が関連するプロセスについて,他者からの評価や関係満足度などを今後検討することが議論された。