本研究の目的は,これまで我が国の心理学において取り上げられることがなかった自己憐憫について,過去の事例研究や自由記述の結果をもとに概念を整理し,その結果に基づいた尺度を作成して実証的に検討することであった。研究1では,大学生に自己憐憫の経験を尋ね,自己憐憫とは日常的な場面でも生じるもので,その内容としては他者を意識した感情や反応があることが明らかにされた。研究2では,その結果をもとに自己憐憫尺度を新たに作成し,322名の学生を対象に質問紙調査を実施した。確認的因子分析の結果から,3因子モデルが妥当であることが確認された。また,α係数や再検査信頼性係数は十分な値を示し,信頼性が確認された。妥当性を検討するために統制感,孤独感,怒りの表出との相関を検討した結果,ある程度予想通りの結果が得られ,妥当性を確認することができた。