本稿では「協調性」をAgreeablenessとCooperativenessの両方を含む概念(非利己的で,他者に対して受容的,共感的,友好的に接し,他者と競い合うのではなく,譲り合って調和を図ったり協力したりする傾向)としてとらえ,この特性の起源に関する文献を展望した。これらの文献からは,AgreeablenessもCooperativenessも遺伝と環境の両方の影響を受けること,協調性は社会的絆の形成・維持に関連する親和性等の気質と自己調整に関連する気質と関係があることが示唆された。また,親和性と,同じく社会的絆の形成・維持に関係があり協調性との関連が深いと考えられる共感性には神経生物学的基盤があることが示唆された。これらの基盤が協調性の遺伝的起源の一部となっている可能性がある。協調性の要素間の関係やパーソナリティ特性としての成立過程,環境的起源については,さらに詳細に検討する必要がある。協調性の尺度についても再検討が必要である。