本研究では,過去の認知と将来の期待の組み合わせによって学業場面における4つの認知的方略(方略的楽観主義(SO),防衛的悲観主義(DP),非現実的楽観主義(UO),真の悲観主義(RP))の分類を試み,その妥当性を検討することと,認知的方略の違いによって採用するセルフ・ハンディキャッピング(SH)やストレス対処方略が異なるか検討することを目的とした。専門学校生,大学生,大学院生215名を4群に分類して,防衛的悲観主義尺度との関連や特性不安,課題に対するコントロール感を検討したところ,それぞれの方略の概念的特徴の定義を支持する結果が得られ,群設定の妥当性が示された。また,SO群とDP群はSHを用いず,SO群は問題焦点接近型の対処方略を採用していたが,UO群とRP群はSHと問題焦点回避型の対処方略を採用していた。4つの認知的方略の特徴の類似点と相違点が示され,これらの方略の適応性が議論された。