本研究では,傷つき体験が,体験に基づいて形成される記憶表象を媒介して,後の心理的不適応と結びついているのか否かを明らかにすることであった。Brewin et al.(1996)によるPTSDの二重表象理論を援用し,傷つき体験に基づく記憶表象を,操作的に「状況依存的記憶」と「言語的記憶」という2つの処理形態の異なる記憶表象からなるものとして定義した。大学生236名を対象に質問紙調査を行い,記憶表象媒介モデル,傷つき体験直接影響モデル,以上の両者を併せ持つ混合モデルの3つを構成して,パス解析を行った。その結果,記憶表象媒介モデルが最もあてはまりが良いことが示された。