本研究の目的は文化的要因を考慮する社会的スキル・トレーニング(SST)のプログラムの開発とともに,プログラムの効果をSSTの実践を通して検討することである。中国の若者の社会的スキルレベルが低下する社会的背景を踏まえ,研究1では,中国文化の要素が考慮されたSSTプログラムを作成した。研究2では,実験計画法を用いて中国人大学生を統制群(58名)と実験群(40名)に配置し,研究1で作成したプログラムを実験群に実施した。その結果,実験群は中国文化に基づく社会的スキル尺度と通文化的社会的スキル尺度の両方で得点が有意に上昇したのに対し,日本文化に基づく社会的スキル尺度の得点は変化しなかった。また,その効果は3カ月の追跡調査においても持続された。一方,統制群はすべての社会的スキル尺度において有意な得点の変化がみられなかった。これらの結果を踏まえ,本研究で開発したSSTプログラムの中国文化に特有な要素が検証できたと推論される。