本研究の目的は,大学生401名を対象に,対人関係における動機や目標志向性および対人行動が,過去の認知と将来への期待の組み合わせによって設定された認知的方略のタイプ(方略的楽観主義(SO),防衛的悲観主義(DP),非現実的楽観主義(UO),真の悲観主義(RP))で異なるか検討することと,対人関係における動機,目標および行動の因果プロセスについて検討することであった。その結果,SO群とUO群は親和願望が高く,DP群とRP群は拒否不安が高いことが示された。また,SO群とUO群は経験・成長目標をもち,積極的・援助的な対人行動をとっていた。因果プロセスの検討から,4つの群すべてにおいて親和願望が経験・成長目標を介して積極的な対人行動に影響を及ぼすことが明らかになったが,UO群とRP群においては,自分の性格に対する良い評価を得るために一見ネガティブにもみえる行動をとる可能性が示唆された。