ストレス経験への適切な対処は情動知能の向上につながる可能性があるが,これまでの研究では,この可能性はほとんど検討されてこなかった。本研究では,ストレス経験として大学入試を取り上げ,大学入試に対する認知的評価,ストレス対処と情動知能の成長感の関係を検討した。調査票に回答した参加者のうち,大学生484名(男性242名,女性242名)を分析対象とした。多母集団の同時分析の結果,入試形式にかかわらず,自己活用接近対処と他者活用対処が情動知能の成長感の向上につながることが明らかになった。さらに,媒介分析の結果,自己活用回避対処は,情動を改善させることで後の問題への取り組みを促進するという間接的な形で,情動知能の成長感の向上に寄与していた。この間接効果は,大学入試に対して回避的な評価をしていないほど強くなることが示された。