魚醤油は,魚の内臓や肉に含まれる酵素により,魚自身の動物性タンパク質が分解され,グルタミン酸をはじめとするアミノ酸やペプチドになり,それらを含む調味料である。魚醤油といえば,世界的にはタイの「ナンプラー」やベトナムの「ニョクマム」は有名であるが,国内では秋田県の「しょっつる」,香川県の「いかなご醤油」,能登半島では真イカの内臓を使用した「いしり」やイワシやサバなどを主原料とした「いしる」などがある。風味が独特で,醤油やうま味調味料の普及により家庭での使用は少ないが,地方では魚醤油を用いた郷土料理などに利用されている。筆者らは魚の内臓の廃棄物の減量化と,資源の有効利用の観点から,マグロから取り出した内臓除去部の幽門垂を原料として,魚醤油の開発を試みたので解説していただいた。