1. 協會6號と7號及び中尾氏のAP酵母に就いて, 特別の保温の設備を使用せずに高温糖化酒母を仕込んで見た。 2. 速醸翫の仕込の要領に準じて, 18水, 乳酸40ccで湯麹をしてから蒸米を熱掛して58℃で仕込んだが蒸米は餅状になつて麹と混和せず液化糖化は良く行はれなかつた。 3. 24時間後糖化不十分ながら三分の一宛に分けて急冷し, 夫々三種の酵母を添加し, 以後は暖氣樽等も使用せず酒母を育成した。 4. 酒母は稀薄で内容不調のため, 十分に枯して使用した結果, 6號酵母は概ね順調な醗酵經過を示したが, 7號酵母は高泡を示さず15日目頃よりアルコール16%, ボーメ1.8で醗酵は止まり甘敗してしまつた。 5. AP酵母も高泡を示さずカニ泡が續いたが, 前緩後急式に醗酵は順調に進み, 特異の香りを示した。 6. 生成酒は三者とも着色が濃ゆく, 香味も良好でなかつたが, 酵母以外の條件は同一にしたのにも抱らず各々特異の醗酵を示したのは酵母の特性を良く現はしたものと思はれる。