甲州種及びミルズを原料とする果酸について, 醗酵経過及び亜硫酸添加と連関して酵母群の動態を調査した。 1. 全酵母数の増加は亜硫酸添加果酸では増殖誘導期間が延長し, また増殖速度は酒精生成速度に対して対照酸よりおくれ, やや高濃度酒精果醪中で行なわれたが, いずれも到達した最高数には大差がなかつた。 2. 甲州種とミルズは最初の自然酵母数やブドウ酒酵母の割合等に著しい差があつた。また全酵母数の最高はミルズでは甲州種の1/2程度に止まつたが, これは高温醗酵が主原因の一つに考えられた。 3. 野生酵母群の生菌数割合を得るに稀釈果汁寒天を用いPlate cguntする方法を試み, 従来の斜面採取法と比較したが, 極めて簡易であり且つ信頼度の高い結果が得られた。 4. 野生酵母の割合はSO2 50 ppm添加の果酸 (KS) では, 最初明らかに著るしく打撃を受けて減少するが, その後急速に増加し, その生菌実数の最高は対照と同程度まで増加した。このことは亜硫酸で野生酵母を抑制する観点からは注目しなければならない。いずれも糖分 (屈折度) が低下し始めた頃その割合は最高に達し, 実数の増加はその後も続く場合もあるが酒精濃度1~3%の間にご著るしく活性を失わない12%にご到つて活性野性酵母は全く消失した。 5. 全酵母数曲線の対数期の初め屈曲点を認めたが, この時期は多くの野生酵母が活性を失う時期と一致した。また野生酵母の割合が亜硫酸添加試料において20時間後頃比較的高い値を示した原因の一つとしてブドウ酒酵母群の活性が低下することが推定された。