形態性質の異る4種の麹菌を用いて清酒の醸造試験を行い菌の性質と酒質との間の関係を考察した。就中本年は昭和28年に用いて酒質淡麗で吟醸香を与えるものと判定された菌株を再び用いて, 再び同じ酒質の清酒を醸出して再現性を証明し, 又麹の着色を再現するような菌株を用いて麹の着色と清酒の色, 粕の褐変化等との関係を追求して之等が相互に関連することを認め, 又種麹を単一菌株で用いた場合と複合菌株で用いた場合とで製麹中菌の変性に相当の差のあることを証明し, その他清酒中に見出される有機酸の種類の多くは既に製麹中に麹中に生産されることを明かにした。菌の性質と酒質との関係は殆ど前回の結果と同じである。 終りに試醸に於て常に御視察御高言を賜つた東大教授坂口謹一郎博士, 種々御指導を賜つた山田所長に厚く感謝の意を表する。 尚仕込第7号は武藤技官の試醸したものである。記してお礼申上る。